井草音楽館

ジャンルにこだわらず、好きな曲、気になった曲をご紹介します。

今、風の中/ザ・ナターシャー・セブン

80年代の半ばぐらいまで、テレビは夜の12時を過ぎると終わってしまっていた。最後まで放送していたのは東京12チャンネルだった。12チャンはちょうどそのころテレビ東京に社名を変更してたかもしれない。 


日付が変わった頃に時代劇の再放送を始め、そのあと1時ごろから「テレビ予備校」という番組をやっていた。その名の通り、予備校の先生が出てきて受験生向けの講義を延々と30分続けるだけの番組だ。ある時など時代劇アワーで「さらば浪人」という番組を放送していて、新聞のテレビ欄に「さらば浪人」「テレビ予備校」と並んでいた。そう表記するためにわざわざ放送してるのかと疑うほどだった。いやきっとそうだっただろう。なにしろテレ東のやることだ。しかし私はそんな辛気臭い番組が変に気に入っていた。寝付けない夜、中学生の私は用もないのに「テレビ予備校」を見ていた。


前置きがすごく長くなったが、今回紹介する「今、風の中」はこの「テレビ予備校」のテーマソングだった。どんな番組でもタイアップが付く現代では想像しづらいが、OPもEDもこの曲だった。当時のレベルを考えると手の込んだPV風の映像がついていた。





今日もまた昨日と
違う道を走り
今日もまた昨日と
違う人に会う

歌とギターと
ワゴンに積んで
求めるものは
まだ風の中

日暮れとともに
次の街へ行き
日の出とともにまた
見知らぬ道を走る



自転車に乗った若者が、まだ超高層ビルが少なかった西新宿あたりを走る映像がついていた。どうして「テレビ予備校」のテーマにこのカントリーバンド「ザ・ナターシャー・セブン」の曲が使われていたのか。たぶんナターシャーのリーダー・高石ともやがかつて「受験生ブルース」という曲を大ヒットさせていたことから連想して依頼されたのではないかと思う。

しかしこの曲はお聴きのように極めて洗練されたカントリー調のポップで、関西ノリ的なコミックソングに過ぎなかった「受験生ブルース」とはかなり趣きが異なる。歌詞の直接のモチーフは旅楽団なのだろうが、何かを模索している姿は、受験生も感情移入しやすかったのではないだろうか。



朝の光はいつでも
新しいはずなのに
街も空も友達も
疲れて見える

僕たちは今
どこにいるのか
求めるものは
まだ風の中

声をかければ
手を振っている
夏の少女たちが
夕陽に遠ざかる



ナターシャー・セブンは、政治的なアプローチの音楽に疲れた高石ともやが新しい音楽を模索していた時期にバンジョー弾きの大学生・城田じゅんじと出会って結成したグループだった。この歌も作詞作曲と主唱は城田だ。尺の都合か、「テレビ予備校」では上記の2番は流されていなかった。アコースティックをベースに、日本ではあまり聴かないカントリーライクなギターのフレーズが割り込んでくるのが印象的だ。ハーモニカも美しい。



窓の景色は後ろへ
千切れて消えてゆく
ワイパーが揺れる間に
季節が変わる

ずいぶん遠くまで
来たはずなのに
求めるものは
まだ風の中

闇を切り裂く
ヘッドライトよ
僕らの時代を照らしておくれ

闇に抱かれて
震える人よ
もうすぐ朝だよ
君の 君の 君の
朝が来る



ラストの「君の 君の 君の」の部分は、当時のハマトラ女子大生風の女の子たちがそれぞれアップにされていた。今の受験生活を終えたら、こういうキレイな女の子たちとも仲良く過ごせるんだというメッセージだったのか(笑)ポップ・ミュージックとしても聴ける、非常に良質な曲だったが、ヒットはしなかった。

大衆的人気こそ得られなかったが、城田じゅんじは日本のバンジョー演奏の第一人者としてその世界で広く知られていくことになる。


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ところで、城田は2004年に大変な事故を起こしてしまう。同居していた女性を殴り殺してしまったのだ。殺意はなかったにせよ、傷害致死で逮捕、5年の実刑を受ける。現在は出所してまた音楽活動を再開しているはずだ。


それにしても、その報に接したとき、このような美しい曲を作れる人がなぜ…と思ったものだった。

イチゴの片思い/ペイシェンスとプルーデンス■Tonight You Belong To Me/ Patience and Prudence

最初にこの曲を聴いたのはどこかで手に入れたオムニバスのジャンクCDでだったと思うが、なにしろ衝撃的だった。アメリカにこんな下手な歌手がいるのか、まるでガキじゃねえか、と思ったら、本当にガキ(11歳と14歳)だった。

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この曲は元々1920年代に書かれたというから、この姉妹、ペイシェンスとプルーデンスが歌った50年代にもすでに時代がかったポピュラーの古典になっていただろう。歌詞もハッキリ言って陳腐だし、メロディもシンプルすぎる。そんなスタンダードを年端もいかないような子どもたちに歌わせるというのは、ミスマッチ的な印象を狙うような手法だったのだろうか。日本でもあるか、小学生の演歌とか。

それをやらせたのは彼女たちの父親、マーク・マッキンタイアという人だったそうだ。マッキンタイアはフランク・シナトラのバックでピアノを弾いていたミュージシャンだった。娘たちを遊ばせるつもりでスタジオに連れてきて、ふざけて録音した昔の歌をレコードにしてしまったのだろうか。




もう他の誰かのものだってわかってるけど
でも今夜あなたは私のもの

別れてもあなたは私の心にいる
だから今夜あなたは私のもの

川のほとりを歩いたら
きっと素敵でしょう
もう一度夢を見せて
月明かりの下で


もう最初からふざけているような、童謡みたいなピアノソロ(マッキンタイアが弾いているのだろう)。すぐに歌が始まるが、もう聴いている方が喉が苦しくなってくるようなか細い声。演歌みたいな歌詞と英語の曲としては異常なほど母音を引っ張るメロディによるオールド・スタイルな曲調。もうなんとも「企画色」を感じるのだが、この歌は大ヒットしたそうだ。確かに何度か聴いていると変に慣れてくるというか、また聴きたくなってしまう力がある気がする。


60年代にはフランク・シナトラの娘、ナンシー・シナトラによるカバーも出ている。





こちらはラテンっぽいアレンジで、ごく普通のポップスに仕上がっている。


ザ・サスケ/5カラット

こちらからのつづき

一見アイドルバンド的にも見えた5カラットだが、ドラムの人はダウンタウンブギウギバンドにいた人だったそうで、それなりの実力はあったのだろう。さらに構成をよく見ると、ドラム、ベース、キーボード、ギター、ボーカル&サイドギター、そしてパーカッションとなっていて、これは当時のサザンオールスターズと全く一緒だった。ユニットを編成するときに、サザンをかなり意識していたのではないだろうか。

ジンギスカンのカバーが不発に終わった後、5カラットは「ザ・サスケ」というシングルをリリースする。サスケというのは真田十勇士の猿飛佐助のことだろう。




ザ・サスケ

闇を引き裂くその眼 荒れたケモノの匂い
ヤワな男は無用 さらば落ちこぼれたち

何のために戦う ほとばしる汗を見ろ
情熱を抱きしめて 行くぜ地の果てまでも

走れ サスケ サスケ
ケモノと言われても
急げ サスケ サスケ
ただ一筋に

光れ サスケ サスケ
男の一生を
燃えろ サスケ サスケ
炎で焦がせ
(歌詞は聞き取りによる)

ザ・サスケといっても※プロレスラーとは全く関係ありません




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特撮番組のテーマを思わせるが、この曲は何かの主題歌などではなくオリジナルのようだ。

さらに、(私は現物を聴いたことがないのだが)このとき5カラットが出したアルバムでは、すべての曲で歴史上の人物をモチーフにしていたそうだ(猿飛佐助は架空の人物ではあるが)。つまりボニーMとかジンギスカンなどのドイツのディスコ・サウンド・グループが「怪僧ラスプーチン」とか「インカ帝国」など歴史的な事物をテーマにしていたが、あのコンセプトを拝借して、歌謡ロックで展開したというわけだ。

曲のコンセプトは欧州ディスコ、編成はサザン、ルックスはアイドル、曲調は歌謡曲… と、売れそうな要素をふんだんに盛り込んだわけだが、売れなかったのだ。なぜだろうか。奇抜で安っぽい印象を与えたことも確かだろうが、敗因はそれだけだろうか。

Youtubeで何曲か聴いただけで判断するのもなんだと思うのだが、一番の理由は、なによりボーカルが弱弱しかったからだと思う。すごく下手というのではないが、どこか頼りない印象を受ける。有線大賞での歌唱などバックの女性コーラスに完全に食われている。これじゃ世良や桑田には勝てないだろう。


そのボーカルが今どうしているかというと、ものまね歌手の大御所だそうだ。白倉ヒサオという名前で、矢沢永吉などのものまねに関しては第一人者だとか。私はものまねについては興味がないので、この人のことも知らなかったが、そこまで上り詰めたのなら、よほど努力したんだろうなあ。


 
ギャラリー
  • 今、風の中/ザ・ナターシャー・セブン
  • イチゴの片思い/ペイシェンスとプルーデンス■Tonight You Belong To Me/ Patience and Prudence
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