戦争が終わったときの歌の代表が「ヤツらは町へ」だとしたら、戦争が始まった時の歌の代表の一つが、この「ゴッド・ブレス・ザ・USA」だろう。もともとは中堅カントリー歌手、リー・グリーンウッドが80年代に出した曲だが、当初のチャートアクションは地味なものだったという。







もし明日全てが終わるとしても 
くらしには最善を尽くそうと思う
そしてまた始めるのだ 妻と子どもたちも一緒だ

今日ここで暮せるという幸運の星に感謝しよう
自由のために立つ旗は 誰も奪えはしない

アメリカ人であることに誇りを持つ
とにかくここは自由だから

忘れてはならないだろう
私に自由を与えるために亡くなった人たちを

喜んで立ち上がろう 
今日アメリカを守るために君に続こう
だってこの国を愛しているのは間違いないのだから

合衆国に神のご加護あらんことを



この曲が注目を再度集めたのは、90年代初頭の湾岸戦争、そして21世紀初頭の911以降なのだという。昔NHKでイラク戦争に参戦する若いアメリカ兵士のドキュメンタリーを見たことがあるが、そこでも軍人が集まってこの歌を歌うシーンがあった。この歌は準国歌とも言うべき存在にまでなっているようだ。

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アメリカのカントリー・ミュージックは、日本の演歌とよく比較される。色恋や酒と涙、昔話がテーマになることが多く、労働者階級と年寄りが好んで聞くといわれる。

しかし演歌にはないテーマが、カントリーにはあるのだ。愛国心をモチーフにした曲がカントリーには驚くほど多い。それも「本当に国を愛するだけでよいのか」などというインテリ的な懐疑心や、「どうしようもない国だけどここで暮らしていこうぜ」などというヒネくれた意識など微塵もない、純粋にアメリカを愛するぞ、お前も当然そうするよな、という、傍から見ていると盲信とすら思えるような愛国ソングがチャートの内かなりのボリュームを占めていたりする。

その愛国ソングの中での白眉がこの「ゴッド・ブレス・ザ・USA」なのだ。他の同種の曲に比べてどこがそんなに良いのか、私にはわからないが、とにかく現代アメリカを代表する1曲であることは間違いがない。