平成生まれの人でも、この曲の「ラーララ ラララ~」というリフはどこかで耳にしたことがあるだろう。このキャッチーなフレーズを持つこの曲は、原題を「センターフォールド(Centerfold)」といい、それになぜか「堕ちた天使」という邦題がつけられている。センターフォールドとは聞きなれない言葉だが、何のことだろう。しかもなぜそれが堕天使の話になるのか。



Centerfold

歩いてる?話してる?
なんて最高なんだろう
クラスの天使に
いつだって釘づけだった

まるで雪の結晶
誰も汚せやしない
天使のことを考えるだけで
幸せな気分になれた

時は流れ 
女の子が出る雑誌を立ち読みしてたら
クラスの天使が中綴じにいるじゃないか

血が凍りついたよ
思い出が売られたようだ 
…… ♪♪♪ … ♪♪♪……
天使がセンターフォールドに



あの耳になじみやすいリフはイントロとエンディングで出てきて強く印象に残る。だがお聞きのとおり同じフレーズが短いギターソロでも入ってくる部分があるのがニクい。

あのギターソロの前後は「血が凍るッ!思い出が売られたッ!(汚されたッ!)」…… ♪ギター♪ …… 「天使がセンターフォールドに出てるッ!」という構成になっていて、それまでずっと続いてきたボーカルが一瞬途切れ、そこにギターが割って入るのだが、それがまさに「あの娘がまさか…」と絶句する男心を表現している、ように思えてならない。


机の下から手紙が回ってきたのは
天使の服のことを考えてた時だった
天使を目を合わせるなんて
恥ずかしくてできなかった

天使が青い目を光らせるときには
震えることしかできなかった
天使が近くを通るときには
何かに取りつかれて動けなくなった

あの柔らかいセーターに
触ることなんてできるんだろうか
天使のネグリジェ姿なんて
想像すらできなかった

血が凍りついたよ
思い出が売られたようだ 
…… ♪♪♪ … ♪♪♪……
天使がセンターフォールドに



アメリカの雑誌というのは、結構なボリュームのある雑誌でも、糊綴じ(無線綴じ)ではなくホチキスを使った中綴じだったりする。中綴じの方が安い印象を与えるけれど、一番中央のページを見開きのグラビアのように使えるという利点がある。この中央のページを「センター(真ん中)フォールド(折る)」と呼ぶらしい。

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まあつまり、この曲の歌詞は「昔憧れてた同級生がエロ本のモデルになってたよ」という内容だ。だから中綴じ=堕天使だったわけだ。


そうか、今わかったよ
これはおとぎ話なんじゃないか
雑誌が売り切れる前に
服を着てる君に逢おうかな

君を車に乗せて 
いや君の車でドライブに行こう
モーテルの部屋についたら
服を脱がしてあげるから

身体の一部の動きがおさまらない
心の一ページが剥ぎ取られた
ああ、やっぱりダメだ
雑誌を買うことになりそうだよ

血が凍りついたよ
思い出が売られたようだ 
…… ♪♪♪ … ♪♪♪……
天使がセンターフォールドに

堕天使と歌われてはいるが、しかしセンターフォールドのモデルたちは必ずしも悲しい存在ではない。PLAYBOY とか PENTHOUSE のような大手雑誌でセンターフォールドを飾るというのは、すごく名誉なことらしい。ここに出られるのはその月一推しのモデルだけだ。彼女たちはプレイメイト(PLAYBOY)とかペントハウス・ペット(PENTHOUSE)などと呼ばれ、その世界では大きなキャリアになるんだとか。実際億万長者と結婚したり、パメラ・アンダーソンのようにセレブになる人もいたりする。まして今のようにメディアが発達しておらず雑誌の影響力の強かった80年代には、センターフォールドにはすごい存在感があっただろう。


J・ガイルズ・バンドはよく「アメリカのローリングストーンズ」、フロントマンのピーター・ウルフは「アメリカのミック・ジャガー」などと呼ばれていた。「ワン・ラスト・キッス」など他のヒット曲ももつ実力派バンドではあるのだが、多くの人の記憶に残っている曲となると、やはりこの「センターフォールド」ということになるだろう。